市町村名、決め方のコツ    | 日本語好きな人、寄っといで

市町村名、決め方のコツ   

  コンセプトが多いとイメージは弱くなる

 今年は全国で、市町村合併が数多く行われる年のようです。
 市町村合併には、先祖伝来使われてきた名前の消滅などを廻って大きな争いになることも少なくないようです。
 新しい地名は利害相反する関係者たちの妥協の中から生まれる極めて特殊なネーミングといえましょうが、伝統や美しい日本語を壊わさない配慮が十分行われることを願ってやみません。

 地名について考えるとき、盛り込みたいコンセプトがいくらも浮かんできます。
 そこにはいろいろな人の異なる見識や見解があるでしょうし、 「静かな町」 と 「活性感あふれる賑やかな町」 という相反する概念を同時に盛りこまねばならない場合もあるでしょう。
 しかしながら、それらをすべて盛り込んだらどんなことになるでしょうか。 「静か」 と 「賑やか」 を合わせたらプラスとマイナスで表(おもて) に出る表情はゼロまたは、プラスとマイナスの差の分しか出ないためポイント数が低くなり、表情のはっきり見えない、イメージが曖昧なことばになってしまいます。

 東京、大阪、京都などの都市名は、いずれも最高位にある表情語のポイント数が低く、明白なイメージが捉えにくい名前になっているのもそういう理由によるものです。
 先日発足した名古屋の 「セントレア」 空港もその例です。
 この語の場合、表情語としては 「軽快感」 がただ1つ、低いポイント数で出ているだけで、あとは全部ゼロ・ポイント。 「あらゆる表情をふくんだ複雑なことば」 という以外にコメントできないことばになっています。 

 市町村名を作るコツ・・・。それは一般のネーミングと同様、たくさんのコンセプトの中のどこに焦点を絞るかが鍵となります。
 そしてその数は、せいぜい10項目未満でなければなりません。 (木通)