●「複雑さ」はどんな方法で捉えたか | 日本語好きな人、寄っといで

●「複雑さ」はどんな方法で捉えたか

 ことばの中には分析表の表情語を見ただけで明白な表情が捉えられる語があるかと思うと、表情が捉えにくい語も少なくない。
後者の語は複雑な表情を持った語に多いのだ。


 「複雑」という語は、現代では「不明瞭,インケン」など、ネガティブな意味に使われることが多いようだが、この語の本来の意味は奥行きや厚み、高級感、優雅さなどに結びつくことの多い語なのである。


 音相分析では、ことばがもつ複雑さを[複雑度」欄で示すが、そこで示される複雑さの程度は次の3つのものから捉えたものである。


(1)表情語の対立関係から捉える。

意味や雰囲気が相反する方向にある次のような表情語が、高点で対立しているとき。

「個性的、特殊的」(K)  対  「静的、非活性的」(T)
「躍動的、進歩的」(B)  対  「暖かさ、安らぎ」(P)
   「若さ、溌剌さ」(G)   対  「静的、非活性的」(T)
   「庶民的、適応性」(M)  対  「個性的、特殊的」(K)
   「新鮮さ、新奇さ」(C)  対  「高尚、優雅」(S)
   「明るさ、開放的」(I)  対  「静的、非活性的」(T)
   「強さ、鋭さ」(L)    対  「暖かさ、安らぎ」(P)
   「派手、賑やか」(E)   対  「安定、信頼」(Q)
   「若さ、溌剌」(G)    対  「高級感、充実感」(R)
   「動的、活性的」(D)   対  「静的、非活性的」(T)
   「高尚、優雅」(S)    対  「動的、活性的」(D)
   「現代的、都会的」(H)  対  「静的、非活性的」(T)
   「シンプル、明白さ」(A) 対  「高級感、充実感」(R)
   「強さ、鋭さ」(L)    対  「静的、非活性的」(T)     ・・・・・・・


 このような反対方向を向く語の場合、その表情は相殺されてゼロに近づくのでなく反対方向の表情を同時にもった「複雑」な語となるのである。


 表情語の中にこのような対立関係がある場合、1対立ごとに1ポイントと計算する。


(2)表情語の最高ポイント数が低いとき


 表情語のポイント数はその表情語と全く相反する概念の語との差の部分が表示されると考えてよい。したがって、表情語の最高ポイント数の低い語は複雑な表情を持った語といえる。


 そのため、最高ポイント数を3段階に層化し、それぞれに次のポイント数を与える。
    最高ポイント数が24ポイント以下・・・・4ポイント
    最高ポイント数が34ポイント以下・・・・3ポイント
最高ポイント数が50ポイント以下・・・・2ポイント


 (3)逆接拍が多いとき。


 逆接拍のことは前項で述べたが、逆接拍は語全体のイメージに複雑さや奥行き感を与えるため、一語中に逆接拍を多くもつ語は、複雑度の高い語といえる。語の拍数に対する逆接拍数の比率により、次のポイント数が付与される。
     拍数比50%以上・・・・3ポイント
     拍数比35%以上・・・・2ポイント
     拍数比25%以上・・・・1ポイント

以上(1)(2)(3)項のポイント数を合計し、その和が4ポイント以上の語には複雑度欄に「複雑」、3~2ポイントの語には「やや複雑」、1~0ポイントは「0」と表示する。