“可能性を秘めた車” 「bB」(トヨタ車)・・・いま1つ足りないメカ表現の工夫 | 日本語好きな人、寄っといで

“可能性を秘めた車” 「bB」(トヨタ車)・・・いま1つ足りないメカ表現の工夫

 トヨタの小型大衆車で、「bB」は、「未知の可能性を秘めた箱」(Black Box)からつけた名前です。

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 「未知の可能性」や、「夢」、「期待感」などをことばの音で表現するには、情緒解析欄に「神秘的」、「不思議な感じ」、「普通でない感じ」、「夢幻的」などの情緒語が出ていなければなりませんが、それには表情解析欄の「安定感(Q)」、「充実感(R)」、「優雅さ(S)」、「静的(T)」などが高点であることが必要です。
 分析表を見ると、これらのどの項にも高点が出ているので、「未知の可能性」を表現している語のように見えますが、ここで捉えた「可能性」は心情的なそれであり、クルマにほしいメカニックな可能性ではありません。
 メカ的な可能性を表現するには表情解析欄の「躍動感(B)」、「活性感(D)」、「現代的(H)」、「合理的(J)」などが高点でなければなりませんが、分析表で見られるように、それらはどれもゼロポイントになっていて、その種の表現を持たない語であることがわかります。

 心情的な可能性を捉えていればそれ以上は求めるまでもないと思われるかもしれませんが、高い音相感覚を持つ現代人はこの程度の異和感にも鋭く反応する感性をもっているし、それは大衆がネーミングの良否を採点する際のモチベーション(動機づけ)にもなっているのです

 この語がメカ的な表現を欠いた理由は、「有効音相基欄」が示しているように「濁音および逆接拍の多用」と、「調音種比の低さ」があるからです。

 逆接拍とは、子音と母音の明るさ(B値)が+と-の反対方向を向く拍(音節)をいい、ここでは「ビ」音(B+i・・・-と+)が該当します。それが2拍(50%・・・標準は23%)も入っているからです。
 また、調音種比とは拍数に対する調音種の種類の数を見るもので、4拍語の標準は4音種ですが、この語には破裂音と両唇音の2音種しかないからです。