「潤る茶」(キリンビバレッジ)か、「潤るん茶」か・・・販売ターゲットによる微妙なちがい | 日本語好きな人、寄っといで

「潤る茶」(キリンビバレッジ)か、「潤るん茶」か・・・販売ターゲットによる微妙なちがい

 玄米、ハト麦、コラーゲンなどをブレンドした「潤る茶」。
 文字の使い方も面白いが、音の面にいろいろな工夫が感じられるので、その工夫の内容を明らかにしてみようと音相分析を試みました。

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 表情解析欄を見ると、情緒感をつくる薄青色の表情語T、Q、P、S、Rの各項をトップに並べ、奥行き感をつくる逆接拍「る」を2音入れて優雅な雰囲気をもったことばであることがわかります。
 また、この語のウマさは明るく強い「茶」(ちゃ)の1音を一段強く印象ずけるため、「ちゃ」の前に暗く重たいイメージを作る有声音を3音(う、る、る)を置いていることです。
 このような手法を音相論では「他援効果」と呼んでいます。
 また、表情語の最高点を45.0と低目に抑えたため、日本茶らしい奥行き感が作られています。
 こうした種々の工夫が、この語にユニーク感を作ったことがわかるのです。
 だが、この語の音の納まりの悪さはどう考えても気になります。音の流れに心地よいリズム感と安定感がないのです。
 「言いにくさ」(難音感)を作っているのは「る・る・ちゃ」の3音に同じ前舌音(舌先で出す音)の連続があるのです。
 言いにくいことばは、発音がしにくく聞き苦しいうえ、そこでイメージの流れが壊れるため、なるべく使用は避けたほうがよいものです。

 その「言いにくさ」を避けるには、前舌音の3連続を断ち切らなければなりませんが、参考までに3音の間に「ん」を入れて「うるるん茶」という新語を作ってみました。
 「ん」の音は、音声学では特殊音素といって、音が持つべき要素(調音種)を持たない特別な音ですが、これを間に入れることで前舌音の連続が切れ、難音感がなくなります。

 「潤るん茶」をついでに分析してみましょう。

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 「ん」が1音入ったことで、濃い青色の表情語「軽快感」(F)と「新奇さ」(C)が入り、音の数も1音増えたため逆接拍が作る複雑さが弱まって、明るくモダンな若者向きのことばになっています。

 その明るさやモダンさが、この商品にとって有効なものかどうかの判断は企業が企図された販売ターゲットがとちらであったかによって決まるのです。