「ごくうま」を分析する・・・忘れられた「音」への配慮 | 日本語好きな人、寄っといで

「ごくうま」を分析する・・・忘れられた「音」への配慮

 「コクがうれしい・ごくうま」というキャッチ・ワードで昨年、アサヒが売りだしたビールです。
 「コク」が売りもののビールなら、ネーミングが伝えるイメージにも「コク」と「ビール」は大事なコンセプトとして音相的にも表現されていなければなりません。
 この語がそれをどの程度捉えしているかを見てみようと、音相分析をしてみました。

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gokuuma


 「コク」という概念をイメージ的に表現するには、表情解析欄に優雅さや奥行きを作る「静的」(T項)、「高級、充実感」(R項)、「安定感」(Q項)、「優雅さ」(S項)などの表情語が高点で出ていなければならないし、のど越しが爽やかな「ビール」のイメージを伝えるには、「シンプル感」(A項)、「新奇感」(C項)、「軽快感」(F項)、「庶民的」(M項)、「爽やか」(N項)、「健康感」(O項)などが高点でなければなりません。
 分析表をみると、「コク」を作るP、Q、R、S、T項はすべてを捉えていますが、ビールの表現に必要なN、A、C、F、M、O項はどれもゼロポイントになっています。

 「コク」に囚われて、「ビール」表現への配慮を欠いた語であることがわかるのです。この名に、わずかでも「ビール」のイメージが表現されていたら、売上げも変わっていただろうことは言うまでもありません。
 空気のように忘れがちな「ネーミングの音」の効用と怖さがそこにあるのです。