日本語好きな人、寄っといで -31ページ目
<< 前のページへ最新 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31

「LACHIC」(ファッション・ビル)を分析する


 ブランドの指名買いやトレンドに振り回されることなく、自分らしいライフスタイルを楽しめる場所という、ユニークなビルが名古屋に誕生したようです。

 この語の音がそうした狙い(コンセプト)をどの程度捉えているか、音相分析を試みました。

 表情解析欄の上位に 「活性的、爽やか、現代的、進歩的、若さ」 などが並んで華やいだ現代感覚を捉えたあと、「健康感、庶民性、個性的、合理性」 など 『らしさ』 の表現が続き、ユニークなビルのイメージが表現されているのがわかります。

 また、コンセプトバリュー欄では男女とも若者に人気のある語であることを伝えています。 (木通)



市町村名、決め方のコツ   

  コンセプトが多いとイメージは弱くなる

 今年は全国で、市町村合併が数多く行われる年のようです。
 市町村合併には、先祖伝来使われてきた名前の消滅などを廻って大きな争いになることも少なくないようです。
 新しい地名は利害相反する関係者たちの妥協の中から生まれる極めて特殊なネーミングといえましょうが、伝統や美しい日本語を壊わさない配慮が十分行われることを願ってやみません。

 地名について考えるとき、盛り込みたいコンセプトがいくらも浮かんできます。
 そこにはいろいろな人の異なる見識や見解があるでしょうし、 「静かな町」 と 「活性感あふれる賑やかな町」 という相反する概念を同時に盛りこまねばならない場合もあるでしょう。
 しかしながら、それらをすべて盛り込んだらどんなことになるでしょうか。 「静か」 と 「賑やか」 を合わせたらプラスとマイナスで表(おもて) に出る表情はゼロまたは、プラスとマイナスの差の分しか出ないためポイント数が低くなり、表情のはっきり見えない、イメージが曖昧なことばになってしまいます。

 東京、大阪、京都などの都市名は、いずれも最高位にある表情語のポイント数が低く、明白なイメージが捉えにくい名前になっているのもそういう理由によるものです。
 先日発足した名古屋の 「セントレア」 空港もその例です。
 この語の場合、表情語としては 「軽快感」 がただ1つ、低いポイント数で出ているだけで、あとは全部ゼロ・ポイント。 「あらゆる表情をふくんだ複雑なことば」 という以外にコメントできないことばになっています。 

 市町村名を作るコツ・・・。それは一般のネーミングと同様、たくさんのコンセプトの中のどこに焦点を絞るかが鍵となります。
 そしてその数は、せいぜい10項目未満でなければなりません。 (木通)

流行語 「セレブ」を斬る

今、「セレブ」ということばがはやっています。

 この語はcelebrity (著名人や有名人) の略で、
「名士、有名人、知的で優雅な女性」 のような意味で使われているようです。
 現代人が、そのようなエリート風の人たちをどんなイメージで見ているのか、それを知りたくなってこの語の音相を分析してみました。
 ポッと出てくる流行語には、その時々の人たちのことば感覚が表現されている語が多いからです。

 分析表を見てみると、 「派手、シンプル、庶民的、軽快感、活性感」 などが高点にあり、 「派手さやシンプルな軽快感」 といった今風のカッコよさを作る表情語が中心になっていて、一と時代前、この種のことばにかならず出た 「優雅さ、高尚さ」 はやっと9番目に低ポイントで出てきたにすぎません。

  「セレブ」 は、現代人のこのようなことば感覚の変わりぶりを、見事に表現していることばであることがわかるのです。
 またこの分析表から、音相分析がことばがもつ内面の機微をいかに正確にとらえているかも見落とすことのできないポイントといってよいでしょう。 (木通)
<< 前のページへ最新 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31